第15章 バンバンジー
「…それね、前やった時から一ヶ月経ってるし、また配信でもすればいっか」
「おぉ… 今度はスパチャオンにするとか言ってたよな」
「うん、使えるものは使わなきゃ」
研磨は悪い顔して、そう言った。
その表情は幼馴染の俺からも正直魅力的なほどで…
「…なに、どうしたのクロ」
「いやなんでもねー、でもお前、お前も気をつけろよ」
「なにが?」
「まぁ、防犯対策とか」
「…ふ 何それ今更。 ていうかお腹すいた」
「あぁ、すまん、手止まってたわ」
小鯵の南蛮漬け。
日持ちもするし、なんか栄養ありそうだし、いいだろ。
あとは鰹のたたきを買ったのがあるし、
オクラのおかか和え、茄子の味噌汁、で十分だろ。
「…オクラ、これどうする?」
「は? …え?」
茹でて冷まして水切ったザルに入ったままのオクラを指して研磨が言う。
俺がいる台所でつまみ食い以外の何か、
しようとしたことなんてなかったからちょっと焦る。
「…切って、しょうゆと鰹節で和えりゃいっかなって」
「…ん、いいね。もうやってもいいの?おれやる?」
「…お、ぉお、頼むわ」
「ん、」
普通にキッチンペーパー出して、オクラの水気ちゃんと切ってるし…
何だこの感じ。
研磨、花嫁修行中…?
「お前、何考えてんの?」
「お腹すいただけ。鯵の南蛮漬け?早く食べたい」
「お前、朔さんとこなんの用事に行った?」
「…え、なんでそんなこと今更……関係ないじゃん」
「運転手やったんですよ、関係ありますー」
「関係ないし」
「関係あるし」
「ない」
「ある」
「…ない」
研磨は夏休みにまた穂波ちゃんに会いにいくらしい。
でもそれはまだ、先のこと。
それまでにもう一つ、
やりたいことがあるからちょっと頼みがあるんだけど…
ってこの後言われたのは別に内緒でもなんでもない。
にしても、金の心配一切なく、
アメリカにいる彼女に自分のスケジュール次第で会いにいけるって…
19歳のくせしてほんと、やってんねー って思いますわ。
俺も、楽しく経済回せるように、しっかり今を過ごさねーとな。