第15章 バンバンジー
ー影山sideー
21時。
京都で試合があったから、今日はホテル泊。
シーズンによって変動はするものの、
どこにいたとしてもするようにしている毎日のルーティンがある。
この時間は基本もう携帯は触らずにいる時間なんだが…
今日はそれができなかった。
原因は今日のフランス戦のあと、
携帯を開いたら姉ちゃんから送られてきてた動画だ。
SNSはアドラーズの広報の人にやれって言われてたものの、まだ手をつけてなかった。
まだ入団したばっかってのを理由に見逃してもらってた。
けどこのインスタグラムの動画をみて、
広報の人に電話して、やり方聞いて登録して、
この動画を探す方法を聞いてってしてたら20時までかかって…
んで、じゃあ見れるようになったってなったら、何回でもみちまう…
こんなに自分を律せないのは初めてで、やべー…って思いつつ、
今だけだとわかっている自分がどこかにいて、そんなに焦りはない。
でもなんつーか、なんか言いたい。
なんかこの、コメント欄ってのを使って、
なんか言いたいってのがあって、
この欲求さえ満たして仕舞えば落ち着く気がして携帯を見てたら今の時間になってた。
【…まだわかんないし、顔隠してる時点で名前とか公開したくないんだろうから
うっかり名前を書くなんてことだけはしちゃダメだよ】
って姉ちゃんに言われたことを頭の中で反芻する。
【影山です。会いたいっす。メシもストレッチもお願いします】
考えに考えて送った。
これでよかったのか、何がアウトで何がセーフかは、
穂波さんの個人情報流出につながることがアウトってこと以外全然わかんね。
でも送ってしまえばもう、
ソワソワしてた気持ちが消えてラクんなって、
携帯はベッドから離れたとこに置いとけるようになった。
その前に3回、動画を見直したけど。
しなやかだけど芯があって、体幹があるのがわかる。
初めて踊ってる姿を見たけど、すげーと思った。
本物だって思った。
メシ食いたい、身体に触りたい、そのために会いたい。
そればっか頭に巡った。
会いてーな、どこにいんだっけ。
…カリフォルニア、だったか?
カリフォルニアってどこだ?