第14章 蜂蜜
ー穂波sideー
三食わたしが作ったもの食べたいだなんて言われたら、
なるべく研磨くんが慣れ親しんだ味を提供したいなって、なるよね。
カズくんといると朝食は和食だから、
今日は泊まりに行っててカズくん不在ってことでスコーンを焼いた。
スコーンは高校生の時からちょこちょこと研磨くんとの朝食で焼いていた。
…もう数えきれないほどに研磨くんと食べた朝食の記憶がある。
その中から、少し肌寒い今日にしっくりくるものを。
あったかいサラダとあったかいスープと
あとはスコーンにはサワークリームと蜂蜜を添えようと思う。
それにしても研磨くんがいた数週間、今日も含めて。
甘い甘い日々だった。
さっぱりも、ねっとりも、あまーいも、きらきらも、とろとろも、
それからしっかり効能も兼ね備えたそんな日々はまるで、蜂蜜のような時間に溢れてる。
研磨くんはこれから約一年、また一層広がる年になりそうで。
わたしもわたしで、まずはこの春学期を。学業を。
それからダンスを、クリエイティブな時間を。
しっかりと謳歌して実りあるものにしたいなって思う。
こんなこと言っちゃったら、
結局、彼氏が全て、研磨くんが全て、みたいだけど。
でも確かにちょっと違うんだ、だから言っちゃう。
ここで過ごす4年間の先に、またあるであろう研磨くんと同じ空間で過ごす毎日を思うだけで。
そっちにいくらでも夢想出来そうなのに、
不思議と今できることに思考がシフトしていく。
だからまた明日から始まる遠距離と言われる時間もきっとわたしたちは大丈夫。
全部含めて、それはわたし達2人の時間でもあるのだから。