第14章 蜂蜜
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「…はい、誕生日おめでとう」
『へ?』
研磨くんが席を立っている間に、お店の人が話かけてくれた。
ワンピースの後ろがすてきだねって、斜め後ろから声をかけてくれたから、
身体をそちらの方に向けて話をしてた。
ちょうど話がひと段落みたいな、そんなタイミングで。
お店の人の目線がちらっとしたから研磨くん帰ってきたんだな、って思って
わたしも顔を目線の方へやったら研磨くんがいて。
それで、椅子に座らずわたしの方にそのまま来たなって思ったら、
背中に回してた手からすって花束が出てきた、さっきの、ことばと一緒に。
白とグリーンを基調としたラウンドブーケ。
その中に少しの赤紫っていうのかな…
白と赤紫の混ざったカラーとか名前のわからない小さな揺れる感じのとかがポイントになって
全体を締めているような感じの。
ラウンドブーケだけどきちっと揃ってなくて、動きがあって、自然な感じ。
バラやカーネションやラナンキュラスの馴染みやすい花たちの白がまた、すてき。
『……ありがとう、研磨くん』
両手で受け取る。
大きな、花束。
研磨くんには何度かお花をもらっていて、いつもとても素敵。
今日は今まで一番大きな花束。意味は特にないと思う、それくらいがまた、いい。
「…ん、やっぱり穂波は花がよく似合う」
『…ん、ありがとう』
抱えた花束をじっくりとみてると、勝手に涙が目に溢れてくる。
溜めきれなくなったそれはそのまま、目尻を伝って頬を落ちていく。