第14章 蜂蜜
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『研磨くん、寝れた?』
成田を夕方に出た。
一人でファーストクラスとかそわそわしそうで、ビジネスクラスでとった。
空いてるからファーストクラス座るかとか言われたけど断った。
……そういうのってもっと利用してる人に言うんじゃないの……
「…ん、時差の影響受けないように計算してみた」
『すごいね、初めてなのに』
「穂波の真似しただけ」
『ん、何か必要なものある?』
Gクラスを運転しながら穂波が聞いてくる。
おれの、左側にいる、穂波。
「…今は特に思い浮かばない」
『じゃあ、眠れたとはいえ身体は疲れてるだろうから家に直行でいい?お腹空いてる?』
「今は別に。 …穂波のご飯食べたい」
『…ん。 ラクにしててね』
ラジオから聞こえる英語の話し声と、
窓の外に流れていく日本とは全然違う景色。
それからやっぱりおれの、左側にいる穂波。
あー、触りたい。
移動による独特のこのだるさに、抗えない欲求が加わって。
むらむらする。 家着いてご飯までの間おれ我慢できるかな…
「…今日カズマは?」
『昨日の夜から撮影に出てるよ。明日の午後には戻るって』
「へぇ」
『連絡とってると思ってた』
「あぁ、うん、まぁとってるけど、これに関しては別に。
絶対会うのわかってるしわざわざ予定とか聞かなかった」
穂波もカズマも平日は普通に学校だから。
おれは普通に家で過ごさせてもらったり、する。
ゲームしたり、株のことやったり、まぁなんかいろいろ。
その間にいろんなとこ行こう、とかおれにはない。
ここに来たのは、穂波に会いにきただけだし、
…迷子になっても困るし。