第14章 蜂蜜
ー研磨sideー
2月中旬。
ロサンゼルスの空港に着いて、ロビーで穂波と待ち合わせる。
がらがらとトランクを引いて歩みを進めると、その姿はすぐに目にとまった。
目が合うと、顔のそばで手を振る穂波。
正直、走り出してもよかった。
そのくらいすぐに触れたくなった、そこにいるってわかった途端。
でもなんとか歩いて向かって、正面で立ち止まる。
「穂波」
『研磨くん』
お互いの目をしっかり見て、それからあとはもう体が勝手に。
腕を広げて抱きついてくる穂波を受け入れ、しっかりと抱きしめる。
深呼吸すればいつもの穂波の匂いが鼻を通って脳内に充満するような感じがした。
『…会いたかった』
「ん、おれも」
長いハグの後、額を合わせてそう言葉を交わして。
それからキスをする。
穂波の顔を両手で包んで、何度も何度も、キスをした。
いくらしたって足りないくらい。
『…ん、すきぃ』
「ん、」
唇を離しても尚、甘えるようにおれに身体を預けてそう呟く。
電話で話してても、葉書にも、会いたいって言葉は一度もなかった。
おれも、同じだったからわかる。
会いたいは、もう百も承知だから、言葉にしないようにしてたこと。
「…ん、いくらでもこうしてられる」
『ん、ね。 …夜久さんがいたら止められてる』
「…ふ」
『いちゃつきすぎって、何度も我に返してもらったよね』
高校の時、夜久くんにはよく止められた。
お前らどこでいちゃついてるんだよ、ここは日本だぞって。
でも今はここはアメリカで。
しかも空港で。
ハグを、キスを、止める人なんてどこにもいない。
だから、自分達で止めないといつまでだってこうしてられる。