第13章 空
「…穂波は撮影とかしないの?」
『へ?』
「へ?じゃなくて」
『いやだって…』
あまりにリンクしてきて。
間抜けな声だって出てしまう。
『ダンスのだよね? 実はちょっと考え始めたの、しかも、今日』
「まじ。 聞かせて」
それからカズくんと一緒に動画のことを空想した。
カズくんのお父さんが編集した動画がYouTubeに既にいくつかある。
大会にはほとんど出てなかったのに海外の大きなスポンサーがついたのは、その動画たちがきっかけだった。
だから撮ることに関してだけじゃなくて、話はいろんな方向に広がった。
「空の写ってる動画がすき。 …プロパートとかでもさ、なんか。
そりゃビルいっぱいの街中だとなかなか映らなかったりするし、夜だと特によくわかんないけどそれでも。
それでも、下から撮ってるわけじゃなくても、空が映るじゃん。
世界のどこでどんな風に撮っても不意に。屋外なら。室内でも窓に見えたりする。
なんか、おれ、あれがすきなんだよね」
『……』
「だからおれは、こっちきて父さんじゃない人に撮ってもらうようになったんだけどそれは伝えた」
『……』
「アキくんじゃない人に撮ってもらうなら、穂波も。
…ってわざわざおれが口出すことじゃないけど …ちゃんと伝えてね」
『そだね… ていうかそれかも。 それ大事だね。 空、か。 風も。
そういう、自分にとっての大事なエレメントは、ちゃんと確認しておく』
今までつーかーじゃないけど、お父さんやお兄ちゃんやツトムくんや。
写真も動画も、よく知ってる人が撮るものが多かった。
だから確かに、自分の好み一辺倒にするつもりはないけど、
すり合わせていく過程で、自分のすきを伝えることは大事だと思った。
そして、やっぱり、空。
『…今日のキーワードは、空かもしれない』
「それは、多分、それを言い出したらってやつな気がする」
『…んふ』
確かに、それはそうだなっとか思いながらそれでも今日は、空がキーワードの日。
いつか今日の日をどこかの空の下で思い出して、
そうしてひとつながりに蛍くん、カズくん、研磨くんを想うんだろうなって。