第3章 くじら

ー研磨sideー






やば…穂波のこと、不安にさせてるよね、これ。
何言ってるんだろ、おれ。

でも実際、そうかもなとか、思ったんだ。
無意識にだけど、そうしてるのかな、とか。

…なんかおれ、ちょっとおかしいな。

っていうか、おれらこれ、大丈夫かな。

なんか２人でぐらぐらしてて、これってあれじゃないかな。
危機っていうか、あれだ、ちょっと距離おこうってなる流れ。かも。







『…研磨くん』

「………」

『わたし研磨くんになら拘束されたい。束縛されたい。縛られたい』

「…笑　ちょっと… なんでそうなるの」







結構頭の中シリアスになってたのに。







『…そこに研磨くんの愛があるならわたしは全部喜んで受け止める』

「………」

『わたしがこんなだから、研磨くんに色んなこと考えさせちゃってごめんね』

「…いや、それはいい。穂波がそんなだからおれらは出会って、今こうしてられてる」







って、今、別にそんないい状態じゃないか。








「もし、おれがさ」

『うん』

「月島とも赤葦とも、リエーフとも… ってちょっとキリがないからここでやめるけど。
なんか色々、男たちと話すな、会うな、って言ったらどうする？」

『……はぅ…』

「…笑　いや、いまそんな感じになるとこじゃない」

『多分、研磨くんごめんね、って言って話し合う』

「え？」

『研磨くんのことが好きすぎて自分に嘘をつくとか、できないことをできるって安請け合いすることはできない。
でも絶対、その研磨くんの言葉に、想いにはきゅんとする。ものすごく。
きゅんとしながら、でもそれはきっと不可能だから、って話し合う』

「………」








ちょっとした極論の例え話を振ったつもりだったんだけど。
すごい、ガチな返答がきたな。








『でもそうだな。連絡取らないで、電話しないで、夜に２人で会わないで。
そういうことだったら、うん、周平とかツトムくんとかカズくんとか遊児は例外にしてくれるなら。
うん、できるよ、って普通に言える』







…そっか、でも確かに。
そう言いそうだな。

だからこそおれは、そんなこと言わせないことを選べるんだ。

穂波がおれを真っ直ぐすきでいてくれてるから。