第12章 Hi!
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「治くーん?」
こんこんってノックの後に黒尾さんの声。
買い出し行くやんやった。忘れとった。
「あ、すんません!もう出ますか?」
「あ、いやここにいるってわかったならいいのよ。
ちょっと車エンジンかけておくから5分…5分で冷えるかねぇ、穂波ちゃん?」
『え、いや、まだ暑いかもだけどそれも一興として乗ればいいと思う!』
「だよね〜そう言うと思った。 じゃー、5分後くらいに出れるような感じで。
……ってシャワー浴びなきゃいけないようなことしてないよね?」
『クロさっ』
「できそうやったんですけど、やめときました〜」
「はいはーい、素直でよろしいこと。 じゃ、よろしく」
かっこええよな、黒尾さん。
あのルックスであの雰囲気であの声で。
黒尾て!
苗字までばっちしかいな。
婿養子入って佐藤とか安藤とかなっとったら地味に悲しいやろな…
『んふっ なんでそんな悲しそうな顔してるの?』
「黒尾さんが婿養子入って安藤さんなったらなんか悲しいな思て」
『ふはっ』
「なぁ穂波ちゃん、あれ何?」
『あれはサンキャッチャー。 …また見せるね?』
「ん? わかった。 そっか、時間ないんやった」
『ね、わたしも、侑くん待たせちゃってるや。辞書取りにくるだけだったのに』
「ツム?」
『うん、侑くんと話してて、辞書取りに来たんだ』
「…ふーん」
『…治くん?』
いややなー、研磨くんやない男のとこに戻ってくの。
しかも俺これから買い出しやし。
音駒勢はなんか家族って感じやし、別にいいけど…よりによってツムかいや。
そんなこと思いながら、穂波ちゃんの首筋に指を這わした。
汗がつーって落ちてきて、むちゃくちゃ美味しそうな、首。
『…ッん 治くんやめっ』