第12章 Hi!
ー研磨sideー
8月末。
穂波がアメリカに行ってからもう少しで1週間。
メールしたり、電話したり、しなかったり。
気張ることなく、普通に、過ごしてる。
今までも穂波が海外に行くことはあったから、
そういうのもあって、なんかほんと… 普通にいられてる。
だから変に疲れることもなくいられるのは良かったなって思う。
連絡しなきゃ、とかお互いにないから、気ままで良い。
そりゃ… そりゃ、触りたいなとかは、もちろんあるけど。
これからまだまだ長いのに、言ってても仕方ない。
それまでの時間を有意義に過ごして、触れるときに存分に触るだけ。
朝起きて、株チェックして、今昼ご飯食べるとこ。
穂波が冷蔵庫と冷凍庫に用意してくれた作り置きがあって。
冷蔵庫のは今日の昼でおしまいだ。
牛蒡のきんぴら、切り干し大根とひじきとツナのサラダ。
これが今日でなくなる分。
あと茗荷の甘酢漬けと梅干し。
冷凍庫にある出汁を解凍して味噌溶いて豆腐入れてネギ刻んで…味噌汁。
昨日魚屋のおじさんがおまけしてくれた鯵の干物を焼けば。
多分みんなが想像してるより遥かに、ちゃんとしたご飯を用意できてる。
そこらじゅうに穂波の余韻があって、
例えばストックが切れた時におれは生きてられるのかな、とか思ったりもしたけど…
全部出来上がってるわけじゃなくて、
自分で火を入れたり切ったりとかするストックも多いから、
なんていうか… 徐々に鍛えられてる感じある。 大丈夫そ。
台所の網戸のとこから猫の鳴き声が聞こえる。
鯵の匂いに誘われてやってきてる。
穂波が渡米してから2日くらい経ったころ、
いきなり2匹の小猫がうちに来るようになった。
にゃーにゃーみゃーみゃーうるさいから、
その日は鰹節と塩分不使用って書いてあるツナをあげた。
その日の内にネットで頼んで、エサもあるからお腹は空いてないはずなんだけど。
やっぱ出汁とか、魚とかのにおいは格別なのかな、
こうやって、みゃーみゃー鳴く。