第11章 ラングラー
ー穂波sideー
「穂波、運転ありがと」
『ふふ、どういたしまして。こちらこそ一緒にドライブしてくれてありがとう』
初心者の運転する長距離ドライブに一緒にのってくれるなんて。
ありがたい。
古森くんと倫ちゃんに梅干しやその他もろもろを渡して。
治くんには送るつもりだったから、改めてそれを伝えて。
またねーってして、いま宮城へと向かってる。
研磨くんと一緒に宮城に行くのは初めて。
遊児は学校は夏休みだけど東京でバイト三昧してるみたいで、いない。
でもちょこちょこ会えてるから、良いんだ。
おじいちゃんおばあちゃんに研磨くんを紹介できることも、
あの辺りを一緒に歩けることも嬉しい。
「ドライブってもっと身体が疲れるものなはずなんだけど… ましてや車中泊」
『…?』
「なんか、そうでもない」
『…ふふ、そっか、良かったぁ』
いつもの日々も、
ちょっと違う時間も。
肩の力を抜いて、楽しめたら。
楽しむって何も、ワイワイすることだけじゃない。
淡々とでも、飄々とでも、なんでもいい。
無理なく、楽しめたら。
きっと大体のことはうまく回ってく、
うまく回らなくてもそのプロセスすらも楽しめるんじゃないかなって、
能天気なわたしは思ってる。
いつもの日々はわたし達、をどんどん厚く深くしていって。
こうやっていつもとちょっと違う時間が、そうだな…
わたし達を、広げるような、そんな感じ。
アメリカと日本での、いわゆる遠距離は、
4年はかかるであろうから、もはやそっちが一時的な日常になるんだけれど。
でもきっと、こうして得た、わたし達の層みたいなものは
その日常の中でも力を発揮する… そんな気がしてる。
願い、ともとれるけど、
でもそれだけでは済ませれない、どこか確信めいたものがある。
寂しいは寂しいけれど、きっと大丈夫。
そんな、確信。