第11章 ラングラー
ー研磨sideー
なんかゆっくりとかじっくりとかできなかった。
動物みたいにただただ腰振ってた。
たまに、家でもそういうときあるけど。
今日はそれとはちょっと違う気がした。
なんか、屋外ってことに持ってかれてる感じ。
それから、すっごい… 気持ちよかった。
シャワーは水が結構ぬるめだったから、思いの外ゆっくり浴びれたんだけど
それでもさっき海入ったし、なんか、ちょっとなんだろ……
『あったかいもの、お腹に入れたくない? お水がいい?』
「あ、あったかいのがいい」
『ん、お茶で良いかな?』
「うん、お茶がいい」
別にこういうの、感じること違っても良いんだけど。
でもこうやって、どんぴしゃだったりするとラクだし、いろいろ良い。
──「波長が合ってる」
福永が言ってた。卒業式のあとファミレスで。
虎とかクロとかみんないて、なんかがやがやおれらのことを話してる時に。
波長が合う… それは別に飲みたいものが一緒とか、
だから一緒じゃないから合わないとかそういう浅いものじゃない言葉だなって思う。
違う気分の時もある、それでも合ってるみたいな。
すごいふわふわして抽象的だけど。
とにかくおれらは… んーと、おれは穂波といるとラクだし穂波がすき。
『はい、どうぞ』
まだ食器を集める前に買ったスノーピークのマグに注がれたのは、ハーブティー。
最近穂波が寝る前に飲んでるやつ。
おれはたまにもらったり、普通のお茶だったり、白湯だったり。
「ん、ありがと。 …海って」
『ん?』
「聞こえるんだね」
『………』
おれらのいるとこには小さなランタンがあるけど、
歩く時に使った明るいライトは切ってるし、ほぼ真っ暗だ。
ここから海は、この月明かりでは見えない。
でも確かに、聞こえる。
波の音が聞こえる、のかもしれないけど
でもそれだけじゃない気がする。
有名なアニメ会社の映画であるよね、そんなタイトルの映画。
あれは観たことないけど……
しみじみ、良いタイトルだな、とか。
うん、海が聞こえる。