第11章 ラングラー
8月1日(金)
「わ、なにこれ。想像以上に快適」
穂波と海に来た。
穂波の実家のラングラーを借りて、千葉の海に。
午前中に国立の家を出て、
一宮にある穂波のおじいさんの家に向かった。
シゲさんの実家だ。
もろサーファーで職人って感じの、白髪長髪のおじいさんと
大らかでどっしりとした雰囲気のおばあさん。
2人とも、まだまだ若い感じがした。
シゲさんを育てた人で、シゲさんの遺伝子を織りなしてる人で、
それから穂波が引き継いでる遺伝子みたいなのを確かに感じた。
で、思った。
やっぱ穂波が育った環境、
穂波が囲まれている環境、
穂波にとっての当たり前の風景みたいなのを知るのはおもしろい。
はじめましてとかが苦手なおれでもそんなこと思うんだから不思議だ。
おじいさんの家で昼食をいただいて、
それから一度志田下の海へ行った。
穂波がサーフィンするのを見るのは初めてで。
って言っても豆粒とはいかないまでも、おれがいるとこからは小さく見えるだけなんだけど。
それでも、不思議なくらい有意義な時間に感じた。暑いのに。
夕方になると穂波の顔馴染みがどんどん集まってきて。
紹介されたりして。
彼氏の見学をする女の人とかがおれのそばに座ってたけど
別段、苦には感じなかった。
そう、穂波は古森くんたちが帰った翌朝に生理が来て。
もう血の量は少ないんだって。 だから、普通に海に入ってる。
なんか入れてるとは言ってたけど……
とにかく、おれらはあと3週間もすれば離れて暮らすことになる。
だからそう、今は。それまでは。
おれの時間を全部穂波に。
穂波の時間を全部おれに。
あれからそんな感じで、いつもの日々を過ごしてるんだけど。
今はちょっと、日常ではない時間。
今日はラングラーで寝る。
初めての、車中泊。