第7章 su casa
ー研磨sideー
3月8日(土)
「研磨久しぶり」
「ん、穂波は?」
「何か買いに行ってる」
代官山で待ち合わせて、スケボーを買いに行く。ショップで取材の人も合流だって。
駅で待ち合わせから同行したいって言われたけどカズマが断固拒否したらしい。
そういうのも許される何かがあるんだなってよくわかる図だなと思う。
スポンサーってカズマにとってライフラインだと思うんだけど。
海外の大きなとこもスポンサーにつくようになって渡米しちゃうし
スポンサーとしては関係を繋いでおきたいとかあるのかな。
顔出しは断った。名前も、イニシャルで。一般人だし、それがふつーでしょ。
『研磨くん!』
レッスン終えてからの待ち合わせで。
穂波はなにも食べてなかったのかパン屋の紙袋を手にやってきた。
『お待たせしてごめんね、もう行けます!』
「食べてけばいいのに」
『お店の前のベンチで食べさせてもらう』
「…ならいいけど」
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店に着いた。
カズマは店の人と気心知れた、って感じで話してる。
穂波も仲良さげに挨拶をして、外で食べていい?とか聞いてから
おれのとこにきて
『ちょっと、腹ごしらえしてくるネ』
そう言って頬にちゅってして外に出てく。
まだ取材の人は来てない。
約束の時間に行くと待たれてるから
待たれてると相手のペースに乗せられがちだから
早めに行けるときは早めに行く、らしい。
着いてから一旦、呼吸置けるのがいいんだって。
カズマが店の人に紹介してくれて
取材の人はこういうのも見たがるんだろうけど
いっぱいあるしもう見ちゃいなよ、とか言ってデッキを見ることにする。
いろんなのがある。
8インチの中からとりあえず選べばいいよ、って。
「ていうかストリートでいいの?」
「…研磨、トリックも練習する?」
「んー、痛いのヤダ」
「…笑」
「プッシュだってこければ痛いよ。鬼プッシュで引っ掛けて吹っ飛んで血みどろになった人知ってる」
「カズくんそれ今ここで言う?笑」
血みどろ…
そんななってもやり続けるって、それってまるで勇者だ。
小学生のころ、腕の内側にできた赤いブツブツを
ただの内出血ってクロが言ったの、未だによく覚えてる。