第7章 su casa
「ほら、あからさまに穂波ちゃんが困惑してるぞ、カズマ」
「…あぁ、うん。 スポンサーの企画で、なんか、おれがあげたい人にプレゼントしようみたいな。
よくわかんないでしょ、完全にスケボーっていうよりアイコン扱いされてる感じ……」
カズくんの眉間に皺が寄る。
わかるよ、わかる。
カズくんの想うこと。
そして、こんなに整った顔立ちをして、
大人びたアンニュイな空気を出す11歳の男の子を、
そのスケボーやサーフィンの実力とは別で、
アイコンというか… 違う魅力も紹介したくなる気持ちもわかる。
それに乗り気になんてなり得ないカズくんだから。
ファンに、ではなくカズくんのあげたい人に、なんだろ。
「そんなのしてどうなるの、って思った」
『うん』
心許した人にしかほんとに話さないカズくんだから。
プレゼントしたいっていう人を登場させることで聞き出せる話があると踏んだんじゃないかな。
「穂波しか思い浮かばなかったんだけど」
『え …ん、ありがとう』
「オンラインの記事になるから写真も使われるし。
穂波が全国区… 世界か… まぁ、色んな人に見られるの嫌だし、
そんなとこで穂波の話をしたくない」
『………』
「それで、研磨がいるなってなって。だから、研磨」
『うん』
「いや俺とか、俺とか、俺もいるんすけどねー!」
「やだ、周平なんか出したらそれこそアイコン化が進む」
「まぁな〜 俺超ハイスペックらしいから!笑」
『…笑 らしいね、わたしもそんな噂、聞いたことある』
「ていうか、研磨はその企画ありなわけ?」
「ありじゃないと困る」
「それこそ、取材とか……ヤダ……とか言い出しそうだけど」
「でも研磨くん、いくつかもう取材受けてるでしょ、eスポーツの大会で」
「でも顔出ししてないよな?」
「今回の企画も顔出ししないでできるんじゃない、一般の人なわけだし」
研磨くんは二つほど取材を受けた。
受けざるを得ない取材のみ、受けた。
いきなり現れた新星的な存在への期待感溢れる見出しや質問の数とは対照的に、
研磨くんの返答内容はとても簡素なものだった。
それがまた、研磨くんを知ってるわたしにはたまらなく愛おしく感じた。