第4章 宇治金時
ー穂波sideー
わたしと研磨くんは、お母さんたちよりあとに朝食をいただいた。
それから支度を整えて、研磨くんと一緒に家を出る。
研磨くんはいつもより少し早い電車になっちゃうけど、
一緒に出る、と言ってくれた。
玄関を出て鍵をしめるとこで、研磨くんはちょっと止まった。
どうしたかな?と思って、観察してると
がちゃっと扉を開けてわたしの手首をぐっと引っ張る。
それから玄関の扉に押し付けられて、
強引に、でもとびきり丁寧で優しく甘いキスをくれる
「帰ってきたら連絡して」
『帰って来なくても連絡する』
「…ん」
そう言ってまた、キスをして。
また、キスをして。
いい加減、歩かなきゃって言って歩き出す。
一週間の宮城でこんな風になっていて、
留学することになったらどんなことになっちゃうのだろうと考えてみるけど、
一つも想像が追いつかない。
研磨くんはここから大学通うって言ってた。
アパートとか、なんか、ヤダ…って。
だから、卒業してから向こうに行くまでの間、
お互いの家にいっぱい通えるかな、って妄想してる。
そういう妄想が、現実世界での勉強とかの活力や潤滑油になったりするんだから、
妄想っていうのは侮れない。
妄想で世界を救えたらいいのに。
「穂波?」
『…ん?』
「何考えたの?また革命でも起こそうとしてた?」
『へっ?ううん、革命は起こしてないよ』
「…笑 そっか」
今妄想してたのは、革命なんかじゃなくって、
もっともっとなんだろうな、ほわほわしたもの。
「ふはっ…」
研磨くんが小さく吹き出す。
何がおかしいのかはわからないけど、
こんな風にみんなの朝が、毎日である必要はないけど、
小さな幸せに彩られてるといいな、と思う。
現実に起きない時も、
妄想でいいから、優しくて幸せな妄想を、むふふっとしていられたらなって。
宮城では、蛍くんにも白布くんにも、そしてもちろん遊児にも会う。
遊児はもう部活引退したみたいだから、サーフィン一緒にするんだ。ひゃふー!