第17章 正体
ー研磨sideー
『…でも、彼の方向音痴っぷりは日本でも発揮されてたんだよ?』
電話越しの穂波はいつになく心配そうで、
そういえば心配そうな穂波ってあまり見たことないなって思った。
そんな穂波にそこまで心配かけるなんて… なんかずる…
「…まぁ、本人わかっててそこまで乗り切ったんだろうし」
『…いやでも大丈夫かなぁ …なんかそのまま帰国しちゃいそうじゃない?』
「ふはっ… そこまで?」
到着ゲートから空港の出口までで迷って気付いたら出国ゲートにいて
そのまま列並んで荷物預けて諸々手続き済ませて日本行きの飛行機乗ってるってこと…?
やば… ちょっと想像できるんだけど…
「その辺は翔陽の方がずっと安心して見てられそうな感じはあるもんね」
『あぁもう、うん、ぜっっったい。翔陽くんなら大丈夫。心配ない』
「…笑」
『…でももうチケット取っちゃったんだもんね』
「…ん、最初にきたDMがあれだから」
──穂波のアカウントに入ってたDM。
基本三上に任せてるけど、ふと目に入ったのが影山からだったし開いてみた。
【影山です。6/29〜7/4の中で1日でも会える日ありますか?】
距離とか関係性とか前後の脈略の有無とかがクリアされてたら、
別段変なメールではないと思う。
簡素で手短で好感度すらある。
でも3つのうち一つもクリアしてない…
全く要領を得てない。
強いて言えばあのコメントがフラグにはなるかなってくらいで…
そんな中でこんなメール送ってくるってほんとすごいなって逆に感心すら覚えた。
【孤爪です。ごめん、DMチェックとか基本俺がしてて。
ちゃんと穂波には伝えるけど先に確認しといていい?
その日にちって日本での日にち?】
この状況でそんなに難しいことは質問してないと思う、
しかも6/29って4日後だ。
結構早急に進めてく話だと思う。
だけどこのメールに既読がついてから返事が来るまで1日かかった。
ルーズだからではない理由があるのは、影山とはそんなに親交の深くないおれにでも分かった。