第16章 釘
ー侑sideー
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穂波ちゃんの家に着いた。
でっか。
車庫には他に2台ゴツイの停まっとるし。
全部ベンツやし。
庭もでかいし、家もでかい。
ほんでも全然、奢りもなく庶民的な空気があんのが好きや。
外で足洗って。玄関開けて。
とりあえず買ったもん2人で冷蔵庫とかにしまって。
シャワーどうぞって言われて。
海入ったしそらそうやなって思って。
わかっとってもでも、
家に招待されて、シャワー促されるのとかエロいなぁって思いながら今シャワー浴びとる。
『…侑くん?』
水の音でノックが意味なかったんやろな、
薄ーくドアを開けたその隙間から穂波ちゃんが俺を呼ぶ声がした。
「ぅわ、びっくりした。どしたん?一緒に浴びる?」
『ううん、今はいい。 …違くて、着替え持ってきた。ドアの外にかけておくネ』
「ぉん、おおきに」
今はいい、やって。
ほんま、大丈夫なんかな?いうくらい、チョロない?今日。
シャワー浴びて、置いてあったタオルで拭いて、
ドアのとこにかけてあるPVCのバッグの中の着替えをみる。
…研磨くんのとちゃうよな。
お兄さんのやろか。
新品のTOM FORDの黒のボクサーパンツ。
いやいやいやいや、クソ高い下着やん。もろてええの?
あるんやし履くけども。サイズぴったしやし。
BILLABONGのウォークパンツ。深めのブラウン。調子良さそ。
白いポケT。 …bottega venetaのロゴが同色の糸で袖に刺繍されとる。
いやいやいやいや、シャワー借りて出された服だけでなんぼほどすんねん!
着るけども!
髪の毛をもっかいわさわさっとタオルで拭いてから、
もう一枚用意してくれとったフェイスタオルを肩にかけて台所に行く。
こんな高価な服に水滴らせれん。
ま、タオルもロンハーマンのロゴ入ってるんやけど。
『ぉわ、侑くん。 サイズぴったりだね、かっこいい。
…水でいい?炭酸水もある』
キッチンでなんかしとった穂波ちゃんが俺に気付いてそう言って。
手を洗って拭いて…めちゃくちゃ自然に、俺のためグラスをとってくれる。
そんなん当たり前のことかもしれんけど特別に感じる。