第44章 その琥珀糖の味は… ※R-15
あげはの背中に杏寿郎が手を回して来て
そのままギュッと抱きしめられれば
その腕の込められた力と同じようにして
自分の胸がギュッと
締め付けられるのを感じる
苦しい…胸の中が 苦しい
切ない
切なくて…苦しい
もどかしくて 辛い
欲しい 欲しいのに…
欲しいのは
快感でもなくて
ましてや 絶頂でもなくて
欲して止まないのは 彼自身で…
その熱に身を焼いてしまいたいと
そう きっと…そう
そうであるのに ありながらに
口にしてしまいそうになる自分を
抑え込むのに必死になって
彼に縋り付く事しか出来ずにいて
そこにある快感すらも
求めて居ながらに 足りないのだ
「…ふ、んん゛、ぅ…ん」
杏寿郎… 杏寿郎って
声を潜めなくていいのなら
呼びたいのに 名前…
求める程に叶わない現実が
ここにあるだけなのに
ギュッと俺が自分の腕に力を込めて
彼女の身体を抱きしめた分だけ
それに応じる様にしてあげはが
俺の寝巻を握りしめて来て
俺の行動に対して返して来てくれる
それが 喜ばしい事だと感じながらに…
そう感じている一方で
自分でこうしたいと望んでいながらに
足りない…と
思ってしまっている自分が居て
彼女がそうなるのを見るだけで
それだけで
満足する つもりだったのに
お構いなしにしてしまって
抱きたいと思うほどに熱を拗らせて居て
邪な考えが脳裏に過る
ともすれば それを口にして
現実にしたしまいたくなる自分が
どうしようもない位に浅はかに思えて
その考えが浮かぶ度に己を恥じる
たかが数日が
たった 4日程の事が
ここまで辛く堪えるとは
「あげは、
もし、…そうなりそうなのなら、
そうなってくれても構わないが…?」