第10章 追憶　煉獄家にて

「どうだろうな？…理由次第だがな…、
話してみるか？」

どうしよう？　素直に話して　
果たして許してもらえるのかな？

「言ったからって、許してもらえない
…もあるんですよね？」
「ああ、ある。だが、
話して許すかもしれんぞ？」
「多分…ですけど、私が思うに
許してくれそうにないので…すが？」
「なら、俺にそうされるしかないが？
いいのか？」

つまり　それは右にしたように
左の耳にもすると言うことで…

「同じ様に…ですよね？
違うように…しないですよね？」

きっと　さっきの右耳にした感じなのなら…
多分　大丈夫…だと　信じたい
左の耳を守るように隠していた手を離して
どうぞと言った

同じ様にするだけと言ったので
その言葉通りに左耳にも口付けた

声は押し殺してるようだが
体が微かに震えてるので左の耳が
彼女の弱い所なんだろうと考えつつ

「君はどうして、そこまで頑なになる？
俺に、聞かれるのはそんな嫌か？」

はしたない女と思われたくないと
あげはは言っていたが
自分がした事で
はしたなくなってしまうのであれば
それは男冥利に尽きると言うものだ

「俺に、遠慮はしなくていいぞ？」

全てを受け入れる覚悟でもあると
でも　言いたいのだろうか？
けども　声を抑えるのをやめてしまうと
自分でもどうにでもなってしまいそうで

怖い

必死に堪える姿も
健気で可愛らしくもあるが…
あまり耳ばかりしつこくするのも　良くないか
と思って左耳に口付けていたのを止めて
そのまま首筋に口付けた

「…んっ、……あんっ」

彼女の口から甘い嬌声が溢れた
一瞬その声に自分の耳を疑ってしまった
押し殺して漏れる声とも朝に聞いた声とも
また違っていたから

「よもや…、君は耳ばかり気にしていたから…
すまなかった、耳よりも首の方が
弱かったのだな…」

恨めしそうな視線をこちらに向けていて
そんなに俺に
弱みを握られるのが嫌なのだろうか？

「首は…、ダメです！耳よりもダメっ！」
「君は、耳がダメだ、首がダメだと
ワガママが過ぎるぞ？あまり、そんな事ばかり
言うのであれば…」

「あ、あれば？どうなんですか？
だって、首は…する前に
確認しなかったじゃないですか！」