第76章 深紅のバラと浅葱の蝶 ※R-18
「いいのか?あげは。
俺に…そんな事を強請ってしまっても。
この可愛らしい蝶が…、
可愛らしいままになくなってしまって。
大きく羽ばたいて、君のここで
目立ってしまう事になってしまうぞ?」
先に残した跡とのずれが出来て
蝶が羽ばたいている様に見えるがいいのかと
杏寿郎が…あげはに尋ねて来て
「杏寿郎…、そうして…頂けませんか…?
そこに…杏寿郎、貴方が…
留め置いた蝶を…あぁんっ、
空高く…、ここから…私が高く飛んでも。
その更に上へと、羽ばたける蝶に…。
んあぁ、杏寿郎。
貴方に、して頂きたく…あります…、あぁあんッ」
ちゅう…と吸い付いて
彼女の鎖骨の下に居る蝶を
俺の色に赤く染め上げる
布団の上に放射線状に広がる 彼女の髪が
薄い闇に浮かぶ姿は…さながらに
今 花から羽ばたいて 飛び立とうとしている
羽を広げた蝶の様にも…見える…な
「まるで月まででも、
そのまま飛んで行ってしまいそうな
口ぶりだな…。あげは。君は、
かぐや姫にでもなるつもりか?
だが…、君は…飛んで行かずに…、
ここに居てくれ…るか?俺の隣に」
君が高く飛びたいとそう表現したのは…
その月の高さに居る
彼の首を刎ねる為に他にないが…
彼女が…この蝶に…
自分が月まで飛んでも
更に上まで
飛んで欲しいとそう願った先にあるのは…
純粋な…彼女の願い…に過ぎないのだから
只の一人の女が 只の一人の男に願った願いだ
俺へと願った願いと
彼へ願った願い
それが あげはの願いであるのなら…
叶えずに…は居られまい
「元より…、私の戻る場所を…、
他の誰でもない、貴方がここに
なさったのでありましょう?杏寿郎。
ええ、おります。杏寿郎、貴方の元に…
ずっと…、私はおりますので。
あらせて、頂きたいのです。
杏寿郎、貴方と共に…ずっと…この先も私を」