第76章 深紅のバラと浅葱の蝶 ※R-18
ちゅ…ぅ…と
耳から今度は首筋にその舌を降ろして来て
「あげは…、そろそろ、
目を塞いでる君の
その手は…退けてはくれないのか?」
「ご覧に…なられたい…ので?」
「君が…俺にする…お礼なのなら、
君がそうする所を、この目で…
見たいんだが、ダメだろうか?」
スッと目を塞いでいた手がそこから離れて
スルッと腕を首に回されて口付けられると
「んっ、ご覧になりたいのでありますか?
でしたら、…杏寿郎…、後ろ…に、
このまま、お身体を倒して頂いても?」
身体を後ろにある布団の上に
倒すように促されると
杏寿郎がそのまま後ろに身体を倒した
布団の上に背中を預けて仰向けになると
自分の身体に跨る
あげはを見上げる体勢になる
「まだ、俺からは…、
させてはくれないのか?あげは」
「それは…、お礼にはなりませんのでと
先程も言いましたでしょう?杏寿郎。
まだ、私はお礼らしいお礼を、
何もしておりませんよ?」
こちらからそうさせて欲しいと
彼女に言ってはみたものの
まだ お礼には及ばないと断られてしまった
あげはが自分の着物の帯を
シュルシュルと
音を立てながら解いて行って
その衣擦れの音を 自分の耳が
敏感なまでに感じ取っていて
あげはが自分の帯を解くと そのまま
着物を固定している紐も解いてしまって
「見ているだけでは…、落ち着ない…とでも。
そのお顔は言いたげにありますね…。杏寿郎」
彼女が自分の着ている着物を
脱ぐ姿を見せつけられているだけなのだが
こちらから何かをしたいと申し出ても
先程からあげはには
断られてばかりにあって
こっちが… 落ち着かない気持ちで居る事が
見て取れるほどに表情に
出ていてしまって居た様だ