第67章 春日の決意とカナエの配慮
手に持ったそれを
無言のままで杏寿郎が
畳の上に広げると
それを腕組みをしながら
杏寿郎がしばらく眺めていて
「いや、その、良く宇髄はこの
頼りない服装のままで、
よく自分の妻を外に出せるものだな。
こんなあられもないような恰好では…ッ。
それにしても…だ」
ぴらっと杏寿郎が
畳の上からソレを摘まみ上げて見ると
思わずそれを着ている
あげはの姿を想像してしまっていて
ブンブンと首を左右に振ると
包みの中にそれを戻して
押し入れの中に突っ込むと
「そうだ、稽古だ、稽古をしよう!」
すくっと立ち上がると
着ていた物を脱いで杏寿郎が稽古着に着替える
素振りでもして邪念を払おうと思い
そのまま中庭にへと向かった
ーー
ーー
ーー
仕立て屋の店先のショーウィンドウを
あげはが眺めていると
春日があげはに声を掛けて来て
「では、そろそろ
中に入りましょうか?あげは様」
「そっそうですね。入りましょう。
ここにいつまでも居ても仕方ありませんし」
春日の後の続いて仕立て屋の中に入ると
中ではその仕立て屋の
主人らしき人が作業をしていて
こちらに気が付いて
その作業をしていた手を止めると
視線をこちらへと向けて来る
小さくこちらに会釈して来たので
こちらからもそれに応じて会釈する
「煉獄様…ですね?お話は伺っております。
ご足労をお掛け致しまして、
お待ちしておりましたよ。
いらっしゃいませ。どうぞ、こちらへ。
狭くて散らかった所で申し訳ありませんが」
「いえ、その様な事は、
はい、すいません、お邪魔させて頂きます」
一段高い小上がりになった
畳のスペースに店の主人がこちらに
端の方に置いていた座布団を出して来て
座る様に促して来る
春日と並んで その座布団に座った
「本日は振袖のお仕立て直しと
お伺いしておりますが。
そちらで、お間違いございませんか?」