第67章 春日の決意とカナエの配慮
柱相当 いや 柱と同等
俺がそうあげはの事をそう扱うだけでなく
俺以外の柱もそれは同じ事
それは 柱としての彼女を知っているのだから
その扱いも当然の事
手紙を書いている途中だと言うのに
杏寿郎はそのままゴロンと畳の上に
寝転がると天井を見上げて手を伸ばし
その伸ばした手の指を広げると
その伸ばした先にある 何かを
掴むかのようにしてその手を握る
「お館様は…、三上透真との一戦にだけ。
あげはを柱として戻すと言っていた。
彼との決着の場においては、あげはが
自らを鏡柱と名乗る事をお許しになられた」
あのお言葉は
お館様自身にはあげはを
柱に戻すつもりは無いとのご意向だ
そうであるのならば…
それを望んでいたのは
羽織りを受け取る事すらも
袖を通す事にすら否定的だった
あげは自身であるはずがない
それを お館様に望んだのは
三上透真…その人なのだろうな
彼はその首を
仁科 あげはにでも
婚約者である彼女にでもなく
柱としての彼女に 斬って貰いたいと思ってるのか
「まるで…、介錯人の様だな…」
そう杏寿郎が漏らすように呟いた
いや 彼は
介錯人に彼女をあげはを指名したのか
そうであるのなら あの時の
お館様の言葉にも納得が付くからな
「考えても仕方ないか、どちらにしろ
彼の首を狩るより他にないのだからな。
っと、手紙だ…まだ途中だったな」
畳の上に投げうっていた身体を起して
杏寿郎は再び文机に向かって
手紙の続きを書き始めた
ーー
ーー
ーー
仕立て屋へと向かう馬車の中は
春日さんがいつもの調子で
話をずっとしてくれるので
あげはは退屈をする暇もなかった
「あげは様、到着いたしました。
仕立て屋の方はこちらになります」
そう春日に声を掛けられて
その時に着いたのだと気が付いた位だ
預けるカナエの振袖を持って
馬車を降りた