第57章 焦れる焦燥 ※Rー18
シュルシュルと 衣擦れの音がして
性急に帯を解かれているのが分かる
着物越しではなくて
自分の肌で 彼の肌の感触を感じたい
体温を分かち合いたいと
そんな事ばかりが 浮かんで来る
はしたない…と思いつつに
ともすれば 彼を急かしてしまいそうで
そんな 自分の熱を飼い慣らせずに居て
焦燥感が募る
それと同時に 同じ位
そんな事を感じて居る自分を
抑えつけたい 押し殺したい
彼にそれを 悟らせたくないと言う
自分の建前の様な部分が現れて来て
自制心が それにブレーキを掛ける
どっちも自分の気持ちなのに
自分の気持ちが分からない
ゆらゆらと揺らいで
揺れるのだ
でも 畳の上じゃなくて…
そうするのなら せめて 布団の上がいい
「んんっ、あのっ…、杏寿郎…
せめてっ、そちらに…」
そう 部屋の奥に敷いてある布団の方を
指差して 移動したいと彼に
あげはは訴え掛けてはみるが
「いいだろう?ここでも…」
その間も惜しいと そう言われてしまって
すぐにでも欲しいの
意味を知らされるかの様で
1分の時間でも惜しいと
言われてるかの様に感じる
彼の杏寿郎の熱い感情に
飲み込まれてしまいそうだ
「あげは…」
スルッと… 彼の手で帯が解かれて
帯が解けた時には
もう 身体は畳の上に倒された後で
チュウッと首筋に口付けられて
小さくあげはの身体が跳ねる
「んっ、杏寿郎…」
「あげは、このまま続けても、
大丈夫…そうか?」
天井を背にする杏寿郎が見えて
上から あの赤い 双眸に見下ろされて
自分の中の情動がありながらに
先程のこちらの事を受けて
そう彼が 問いかけてくれるのを聞くと
彼に愛されているのだと
そう自覚してしまって
「あげは、君に触れても?」