第55章 再びましての煉獄家
「あげは。炎柱なら、お前の隣に居る
それがそうだろうが。些か頼りない
炎柱にも見えなくも無いが、お前が
杏寿郎の添え柱になってやってくれないか」
添え柱…
本来の柱に沿うように
補強の為に立てる細い柱の事だ
「お前が傍で、添ってくれていれば
それも。少々腑抜けて腐ってたとしても、
幾らかマシに立ってられるだろう?」
「私が…、杏寿郎さんを支える…柱に。
はい、槇寿郎様、必ず…そうなります」
「あげはっ、それでは俺の
男としての面目が立たん!
俺に守られて貰いたいのだが?君には」
「大黒柱に大黒柱を添えるんだからな、
強固な柱になるだろうな。あげは、
今のお前はあの時の、
…柱をしていた時以上の
より太い柱へと成長したんだ。
鬼殺隊を担えるほどにな、そのお前を
元来の柱に据え直すのをお望みには
お館様はあられないのだろう?」
「父上、俺は…お館様に
あげはを、10本目の柱として据えるのを
提言させて頂きましたが…お館様はそれを。
お聞き入れては下さらなかった」
「それは、一体、何故なのですか?」
杏寿郎の言葉に
千寿郎がそう尋ねて来て
持っていた湯飲みを槇寿郎が置いて
はぁっとため息を付くと
「昔から、お前は肝心な物が見えない奴だな…。
お館様がそれをお望みになられて無いからだと
お前は思って居るのか?杏寿郎」
あげはが柱になる事をお館様が
望んでいないのではなくて…
それを望んでいないのは…
「それを、あげは本人が
望んでいないから…だと
仰りたいのでありましょうが。
それは俺も重々承知しております。
あの羽織を着る事にも、彼女は、
あげははずっと否定的だった」
「しかし、兄上。
姉上が柱にお戻りに
なられてしまったら。
お忙しい身になられるのでは?
お互いが柱となれば、
ご一緒にお過ごしになるのは
難しくなるのではないのでしょうか?」
千寿郎は杏寿郎が柱となって
それまで以上に家に戻れない
そんな生活を杏寿郎が
送っていたのは見ていたのだから
そんな風に千寿郎が考えるのも
ごく自然の事だな