第55章 再びましての煉獄家

子供を設けて育てるだけが

夫婦　ではないと


「父上……。それは
俺とあげはの問題にあります。
自分達が、夫婦として、共に
歩んで行くのに必要な道を選びたいと
俺はその様に考えておりますが。
だが、父上がそう仰いたくなる、
その理由についても多少なりとには、
俺も自覚をしているつもりだ。
正直に言いますれば、
俺も…迷っております
と言うのが、正しくにありますが」


千寿郎は杏寿郎の言葉を聞いて
驚きを隠せなかった

「あ、兄上？」

迷っているとあの即決しかない兄が
自分の気持ちを濁して話したからだ



「だが、俺は、迷っておりましたが、
彼女が選んでくれましたので」


杏寿郎が槇寿郎を見据えて
そう静かに言うと
自分の隣に座っている
あげはの方に視線を向けて来て
自分の想いの丈を話す様に促して来る



「槇寿郎様。
そのどちらにあったとしても、
私は、幸せにあります。
私の願いは、杏寿郎さんと
共に在りたいと、
生きたいと言う事に違いありません。
勿体なさ過ぎて、どちらかだけを
私には到底選ぶなんて、
叶いませんでしたので。
私は、その両方を叶えたくあります」


その両方を叶えたい


あげはの言葉に槇寿郎が
一瞬目を見開くと
ふっとその後その見開いた目を細めた


「両方…か、成程な。
母として生きる幸せと、そして苦労も。
鬼殺隊として生きる、幸せと苦労も。
お前はその両方の生き方を、杏寿郎と…。
俺の息子と共にしてくれると
決めてくれたのだな。…そうか。
杏寿郎の父として、
お前に礼を言いたい。
ありがとう、あげは」

そう言うと
槇寿郎がその場で頭を下げて来て


「杏寿郎を、頼む」


「…っ、槇寿郎…様。いえっ、そんな。
私は、単に、どちらかだけを選べなかった。
そのどちらも欲しがった、我が儘な。
ただの贅沢者にしか過ぎませんし。
ですから、そのっ、槇寿郎様に
お礼を言って頂くには及びません。
どうか、お顔を上げて頂けませんか？」