第52章 蝶の悩みと晩御飯

「あげは、
…そのこれはこれで美味いんだが。
今度は、里芋だけで作ってくれないか？
それだけの味でも食べてみたい、美味そうだ」

きょとんと杏寿郎の言葉に
あげはが驚いた様子で
杏寿郎の顔を見ていて

「え…、杏寿郎が、
さつまいも要らないとかって…。
仰られる事、あるんですね。
知りませんでした。
てっきり、私は、
さつまいもがお好きだとばかり…」

「さつまいもは、好きだっ！」

杏寿郎の言葉に
あげはが首を傾げて

「でしたら、今度はさつまいもだけで
お作りしましょうか？」

「いや、いいんだ。
さつまいもじゃなくて。
あげは、君の作った
里芋ご飯が食べたいと
俺は言っているんだが？」

あげはが杏寿郎の着ている
着流しの襟の開いている部分から
自分の手の甲を喉元の辺りに
割り込ませて来てそのまま　押し当てて来る

突然の大胆な行動…と言うよりはそれは

どちらかと言うと　癖の様な仕草で

「杏寿郎、
大丈夫ですか？熱は無さそうですが…」

「俺が、
さつまいも以外を食べたいと言ったら
熱があると思われるのか？それに…
食べたい物なら…もっと、他にあるがな」

ギュムッと話をそのまま
続けさせて居たら　
とんでもない事を言いだしそうな
杏寿郎の口をあげはが
自分の手の平で塞ぐ

「もう…。杏寿郎は芋焼酎を
飲みすぎにあられますよ。
結構、酔っておいでにあれますね？」

結局　杏寿郎は
芋焼酎の美味しさに目覚めたみたいで

飲みすぎを指摘してるのに更に

お代わりして　飲んでたから

食べてるのは食べてるけど
飲んでる方もそれなりに入ってそうだし

食事の方も皆も
もうほとんど食べ終わってるから

飲んでる方ばっかりになって来てるけど

飲んで酔ってるから　
口もいつも以上に
素直になっちゃってるんだろうけど

「もっと、飲みたい…が？
それに君も、もっと、
そう、遠慮せずに飲むといい。
そうすれば、君からさつまいもの
匂いがして来そうだしな」