第7章 長い一日
再び唇を重ねられて
繰り返し短い口付けをすると
今までで一番 強く押しつけるように
重ねられる 離れきりはしないが
押し当てる強さに 強弱を付けられる
私の肩に力が入っているのに
気が付いたのか 杏寿郎が唇を離すと
「嫌、…だったか?」
と少し熱っぽい声で尋ねて来た
「そ、その…申し上げ…にくいの…ですが」
「どうした?」
「その、深い方…は…、ダメですから…ね?」
と念を押すように確認を取る様にして言った
「やはり、君は、ダメが多すぎるな」
あげはの言葉に難色を示して杏寿郎が言った
「しかしですね、これ以上は
…傷に障ります…それに…、止めろと
仰ったのはそっちじゃないですか!」
杏寿郎の方から
止めてくれと言われたから
こっちとしては止めたのに
逆に不満を言われてしまっては
堪ったもんじゃない
「ですから、今の所は…このくらいで…」
ダメと言う様に 自分の手を
杏寿郎の口に押し当てる
その手を掴まれて除けられると
「俺としては、まだ…君と口付けを
交わしたいと思っていたのだが、
君は…違うのか?」
このくらいでと
口付けを止めるように言うと
もうしたくはないのかと
聞かれてしまった
別に 嫌なわけでも
したくないわけでもない
ただ…あまり 激しい口付けを
交わしてしまうのは
良くないと思っただけであって…
現に彼は死にかけてた訳だし?
「それは、…その、ですね。…やぶさかでは
…ないと言いますか…」
「なら、もっと…と、言う意味で
合っているな?」
先程とは一変して嬉しそうな顔をする
「嫌ではないと、…言っただけでして、
決して、…その様な意味では…」
口付けを何度も交わしたと言うのに
あげはの態度は今ひとつ
煮え切らない感じだった
「なら、止めよう」
え? …意外とあっさりと
彼が引いたのに驚いてしまった
居住まいを正して
ピッタリと引っ付いた距離から
若干の距離を取られてしまう
今までの事があって何で急に近くなった
距離を離されるのかと
あげはは混乱しているようで
チラチラと杏寿郎の方を伺っていた
「どうした?俺の顔に何かついてるか?」