〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第9章 調査兵としての日々
「そんな事より、ジル。
何だか目が少し腫れてるぞ。
寝不足なのか?訓練中に怪我なんてすんなよ」
昨夜、寝る前に瞼を冷やしてみたが、完全に腫れが治まる事はなかった。
それでも泣き腫らしたというよりは、寝不足という事で誤魔化せそうでジルは安心する。
「う、うん、そうなの。
調査兵になれた事が嬉しくもあり、不安もあるからどうしても初日は眠れなくなっちゃった。同室の子達もまだいないから一人で部屋を使うのも久しぶりでなんか変な感じだしね」
「ジルでもそんな事あるんだな…」
僅かに目を丸くして驚いてるローエンにジルはホッとした。
ジルの言葉を完全に信じている顔だったからだ。
そんな感じでローエンが納得して食事を再開すると二人の後ろから声をかけてきた人物がいた。
「ここ、いいか?」
声をかけてきた人物はミケだった。
ミケはジルの向かい合わせの席に移動すると持っていたトレーを置き、椅子に腰掛けた。
ミケは席につくと、朝食のパンを手に取り一口大にちぎって口へ運ぶ。
咀嚼しながらミケの視線はジルの目に注がれていた。
昨晩のミケの告白によりジルはミケから注がれる視線をどうして良いか分からず狼狽して目が泳いでしまう。
「なぁ、ミケ。
ジルにも不安や期待で寝不足になる事もあるんだってさ。
見てみろよ、この寝不足で目が腫れたジル顔をよ」
「ほぉ…それは珍しいな。
お前ほどの女でも不安があるんだな」
ジルの目が腫れてる理由を知ってるミケだったが、ローエンと話を合わせる為とはいえ、人を何だと思ってるんだ!と狼狽してた事を忘れ、心の中で憤慨する。
表に表情を出さないジルだったが、ミケにはジルが憤慨してる事が伝わったのかフッと顔を緩めて笑ったのだった。
そんな和やかな感じで朝食を取るジル達の様子を遠くから見ていた人物がいた。