〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第9章 調査兵としての日々
「それを言うなら今期うちの訓練兵団首席、次席の二人が揃って調査兵になった事のが不思議に思われるだろ…」
「私の場合、ただ訓練で身につけられる技術を習得しただけの話。
調査兵になる為に学んでただけよ」
「まったく…
ジルはいつもそう言って涼しい顔して何でもこなしてたよな。
いや、ジルが誰よりも努力家なのは分かってるけどそれを表に出さない分、皆ジルの事を誤解するんだ。
ジルは苦労知らずの天才だって。
ホントはただの根暗で不器用な人間なのにな。
天才というより天才肌なのは認めるけどさ」
根暗…
私って根暗だったのか─、とローエンに言われるまで自分が根暗だと思ってなかったジルは僅かにショックを受ける。
「根暗ってちょっと酷いんじゃない」
「ハハッ、だってそうだろ?
ジルの声を上げて笑ったり、プリプリ怒ってる所を俺は見たことないが…」
そう指摘されると確かに否定は出来ない。
そういう感情はなるべく表に出さないようにしてきたのだ。
家族を悉く亡くしてきたジルに素の感情を出せる人物がいなくってしまった事と、強くならなくてはいけないという事の想いから諸々の感情を捨ててきたのだから。
物思いに耽っていると隣のローエンがこちらを向き、話を変えてきた。