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〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─

第7章 訓練の日々


ミケが医務室から出ていくのを見届けると、医務室は静寂に包まれた。
その静かな空間でジルは先程見た夢の内容を思い出していた──










そこは何も無く、ただ暗い空間だけが広がっている。
気が付くと己の姿はあの六歳の時に戻っていた。
何も無い空間を彷徨っていると、突如として目の前に父親が現れた。

「ジル、どうしてお父さんとした約束を破ったんだい。
お父さんと約束したじゃないか。
あの話は外でしてはいけないよって」

父の表情はジルの記憶にある優しいものではなく、何も映さない瞳をした虚無の表情だった。
その表情にジルは、ただただ恐ろしかった。

「お父さん、ごめんなさい!
約束破ってごめんなさい!」

父をまともに見れず、謝る事しか出来なくなっていた。
すると今度はジルの後ろから当時のエルヴィンの声が聞こえてきた。

「ねぇ、ジル。
どうして あの時もっとちゃんと止めてくれなかったの?
ジルがちゃんと止めてくれていたらきっと憲兵に話を聞かれずに済んだんだ」

「エルヴィン…」

ジルが後ろを振り向くとやはりあの当時の姿をしたエルヴィンが父親と同じく虚無の表情でジルを責めてきた。

「もうジルとは一緒にいられない。
君とはこれが最後だ。さよならジル」

エルヴィンはジルに背を向けて立ち去ろうと歩き出す。
ジルはエルヴィンが離れていくのが耐えられず、追いかけようとするが足が何かに捕われエルヴィンを追いかけられない。
ジルはエルヴィンに向かって手を伸ばしこう叫んだ。

「エルヴィン!待って!
私を一人にしないで!
お願い!置いてかないでエルヴィン!!」






夢はここで終わった…
あの事件から六年も経つ。
父を失い、母や祖父も失った。
そんなジルが生きる希望にしてるのはエルヴィンだ。
エルヴィンだけは失いたくなかった─
エルヴィンに拒まれるくらいなら死んだ方がマシと思えるくらいジルにとってエルヴィンは希望だった。
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