〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第7章 訓練の日々
森の訓練場を出たミケは、そのまま医務室のある宿舎に向かっていく。
黙って歩くミケをジルは抱かれたままの体勢でジッと見つめていた。
「なんだ」
近くでずっと見つめていれば流石にその不満そうな視線に気づいたミケがジルに問う。
「だって、大丈夫って言ってるのに降ろしてくれないんだもの」
「目の前に体調が悪そうな奴がいて、そのままにできるほど性格腐ってないからな。
それに…」
言葉を一度止め、ジルの目を見るミケ。
急に見つめ返され少し動揺したジルはミケから視線を逸らす。
そんなジルにミケは顔をジルの首すじに持ってくと止めていた言葉を紡ぎ出した。
「それに、こうやってお前の匂いを嗅ぐのは悪くないからな」
スンスンと匂いを嗅がれている状況に更にジルは動揺する。
「ちょっと!それ辞めた方が良いっていったじゃない!」
焦りながらミケにキツく言うと、ミケは顔を元の位置に戻すと再び鼻で笑う。
「言ったな。
だが、承知したとは言ってない」
その言葉にジルは呆れと体の気だるさが相俟ってガクッと項垂れた。
何言っても無駄だし、体が不調でそのままミケと言い合う気力も無い。
もう放っておこうとジルは思った。
そして、何度言っても降ろしても貰えないだろうから、開き直ってこのまま体を預けミケの好きにさせよう。
そうジルは判断し、疲れやら体調不良やらでここまで何とか保っていた意識を手放した。
黙って歩いていたミケがジルに視線を落とすと目を閉じ、眠りについたあどけない顔のジルがそこにいた。
「この小さな体で無理しすぎなんだお前は…」
そう一言呟き、ミケはジルを起こさないように注意しながら医務室へと運んで行った…