〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第7章 訓練の日々
ミケは持ち前の筋力を活かし、巨人に一気に距離を詰め、重い斬撃で項を削ぎ落としていた。
それを見ていたジルは関心と共に自分には無い筋力とミケの実力を羨んでいた。
「私よりもミケのが実力は上ね。
私は無い筋力を跳躍とスピードで補ったけど、余計な体力を使うのも事実。
でも、ミケはそんなもの必要ないもの。
私の戦い方なんて、ミケに比べたらまだまだね」
このジルの言葉にローエンは驚きながら己の意見を述べた。
「何言ってるんだよ、ジルも充分すごいと思うけどな。
周りを見てみろよ。攻撃を当てることだってままならない奴らもいるんだぜ?
確かに、ジルの動きは曲芸みたいだったが、それは筋力を補う為に距離を使って重力とスピードで補填したんだろ」
「曲芸って…
でも、実戦じゃ巨人は静止してる訳じゃないから通用するかどうかは知らないけどね」
「それこそ何言ってるんだ。
今すぐに巨人に遭遇するならまだしも、俺たちは訓練兵だぞ。
今まで壁を越えてきた巨人はいないし、巨人に遭遇するような状況なんて調査兵団に所属しない限りは中々ないじゃないか」
そう言ってローエンはうなじ部分の交換が終わった模型に向かって訓練を開始するべくジルとの話を終了させた。
ローエンの訓練の様子を眺めながら先程ローエンが言った言葉を思い出す。
ローエンはああ言ったが、ジルはその調査兵団志望なのだ。
壁の外の真実を掴むまで何としても生き残らなければならない。
その為に、巨人に殺されない術を学ぶ。
殺されない為には巨人を殺す事か、巨人から逃げる事、だ。
その為に立体機動、巨人の殺し方、馬術の三項目は特に完全に物にしたい。
欲を言えば訓練兵団で教える全てを完璧に物にしたい。
だが、訓練兵団で学ぶ時間は三年という限られた時間だった。
それ故なのか、ジルはもっと速く、もっと確実に…と逸る気持ちを抑える事が出来ずに焦りが募る。
己が無駄にできる時間は一日足りとも無い─
班員全てが模型の項を削ぐまではいかなくても、斬撃を与えられるようになった頃、訓練終了だと教官らに伝えられ、本日の刃を使った訓練は終了した。