〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第7章 訓練の日々
まずジルは先程の考えを実践する為、模型の一番高い所、頭部に向けアンカーを射出し、そのままワイヤーを勢い良く巻取っていくが、途中で頭部に固定されていたアンカーを外した。
ジルの体は勢い良くワイヤーを巻取っていた為、模型より高く舞い上がった。
そしてジルは、項へとアンカーを再び射出し、目標へと急降下しながワイヤーを巻取る。
勢い良くワイヤーを巻取るとかなりのスピードを付けて項に接近した。
ジルは手に持っている柄を握り直し、そのまま項部分に向かって刃を振るった。
ザシュッ!と音を立てながら項部分にあった“肉”に見立てたマットのような物が削げ落ちた。
ジルはそのまま地上に着地し、重い斬撃に手が痺れたのか手を見つめていた。
手を見つめていると、辺りが静かな事に気が付き、顔を上げると班員どころか近くの班の同期までもがジルを見ていた。
何か不味い事でもしてしまったのだろうか…
そう思ったジルは近くにいたローエンに話しかけた。
「私、何かしてしまったのだろうか」
そう問われたローエンはため息をつく。
「何かしてしまったってお前な…」
このジルという女、初めての立体機動の訓練の時からそうだったが、とにかくなんでもそつ無くこなしてしまう。
他の訓練項目は知らんが、立体機動に関しては恐らく今期の同期達より圧倒的にレベルが違う。
こういうのを天才というんだろうな、とローエンは心の中で思った。
「ジル、ホントに刃使うの初めてなのか?」
「当たり前じゃない。今までの訓練に刃使う項目なんてなかったでしょ。
皆と同じく今日が初めてよ」
「まぁ、そうなんだが…
初めての割に上手く出来たからな」
「うーん、教官の手本とかアルベルトのを見て、頭で色々考察してみて実践したからよ。
それに、私だけじゃないわよ。
上手くできる人は他にもいるわ─」
そういってジルはある方向に指さす。
それは、ミケのいる班の場所だ。
ジルが言う上手く出来る人とは、ミケの事だった。