〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第7章 訓練の日々
午後の座学の前に昼食を取れる時間があるのでジルは立体機動装置を外し、保管場所へ戻してから食堂に向かう。
自分の分を配膳係から受け取り、空いてる場所を探していると、既に食事をはじめていたミケと目が合った。
どうやらミケの周りは空いてるらしく、そちらに向かうことにした。
「ミケ、ここ良いかしら?」
「あぁ構わない」
ミケから了承を得るとミケの目の前の席にトレーを置き、自身も座る。
「ねぇ、さっきの訓練の時、私の事見て笑ってたでしょ」
「憐れに感じてな、せっかく助けてやったのに罰を与えられるなんてな。
気の毒とも思ったぞ」
そう答えるミケはその時のことを思い出してか再び笑いだす。
「だって目の前で人が落ちてく所を黙って見てられないじゃない」
「まぁそうなんだが、アイツは兵士志望だろ。民間人じゃない。
立体機動装置もまともに使えなければ兵士になる意味がない。
それをわざわざ助けるなんてな。
ここにいるヤツらは自分の点数の事しか考えてないヤツらばかりだ。
事実、お前以外誰一人とて動かなかっただろう。
成績上位を狙うヤツらは一人でも競う相手がいない方が良いからだろうな」
ミケはそこまで言い切り、食事が冷めるぞと言い、手を止めていた食事を再開させた。
「ミケも上位狙うの?」
そう問えばミケはさぁな、と濁し逆に今度はジルにお前はどうなんだと聞いてきた。
「狙うとかどうってより、ただ完璧に技術だとか戦術だとかは学びたいとは思ってるよ。
私が目指す兵科はそういうのが一番重要視される場所だと思うし」
ジルの答えにミケは目を見開いた。
「お前、調査兵団希望なのか…」
「そうよ、悪い?
だから、私には成績上位とか関係ない。
ただ学べる事は全て学んで、調査兵団に入団したいだけよ」
こんな小柄な女が目指す兵科が調査兵団とは…
好き好んで巨人共の相手をするイカレ狂った変人集団と噂される調査兵団。
本当にこの女は驚かせてくれる。
そうミケはしみじみと思ったのだった。