第5章 番外編
━━━━━堕ちた。
そう、思った。
「ねぇ時雨」
指を2本、激しくなかを動かせば。
ぬるぬるしたなかが誘うように吸い付いてくる。
さっき教授が射精(だ)したものも混ざってのこのぬるぬるだと思うと余計にむかついて。
力任せに時雨を責め立てた。
「気持ちいぃ?」
「……い、い」
「奥、好き?ぎゅってなる」
「………っす、きッッ。おく、きもち………っ」
「………ここ?」
「ひぁ………ッッ!!」
ガクン、て。
腰が浮き上がる。
体も心も、正直な時雨。
漬け込んだ。
そんな時雨の素直さに、教授は漬け込んだんだ。
「挿入れるから、時雨」
ドロドロに溶けたそこへ、自分自身を宛がう。
そのまま腰を押し進めようと、すれば。
びくん、と。
時雨が腰を引く。
「………時雨?」
「や、だ雨音……っ、それは、いや」
「ぇ」
「おねが、ぃ、やだ……」
涙、が。
流れる。
懇願するように真っ直ぐに、俺を見て。
時雨は本気で俺を拒んだ。
「なんで、時雨………」
堕ちた。
そう、思ったのに。
「雨音くん」
ガクン、と膝をついて固まった俺を、教授の声が呼び戻す。
「………手伝いましょうか」
「ぇ」
カシャン、て。
時雨と繋がっていた手錠が外されて。
捕まえていた右手も、やんわりと離された。
「時雨ならもう、余計な体力残ってませんよ。ねぇ?時雨」
「きょー、じゅ……。なん、で……?」
「言ったでしょう?時雨が気持ちいいことにどれくらい耐えられるか、興味があります」
「………ぇ」
「雨音くんも私も、全力で気持ち良くしてあげるから。イかないように頑張ってくださいね」
「………意味、が……」
ガタガタと震える時雨同様、俺にも意味がわからない。
何考えてんだ、こいつ。
「壊れた時雨、見てみたくないですか?」
「ぇ」
━━━━━ドクン、て。
的確に。
目の前の男はこうやって、必ず俺の急所をついてくる。
こいつからは。
逃げられない。
時雨がこいつから逃げられない意味が少しだけ、わかる気がした。