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暗殺者の正しい飼い方しつけ方

第5章 番外編  


プツン、て。
音が聞こえた気がした。






夢中で唇を貪る雨音くんに、身動きが取れずに両手をガシャガシャ鳴らしている時雨のベルトの鎖を外して。
ついでに両足を繋ぐ鎖も外してから。
雨音くんを時雨から、引き剥がす。

「ごめ……ッッ、時雨俺……」


時雨の涙に冷静さを取り戻した彼の瞳に、時雨の姿が写し出されて。
ゴクン、と。
喉が動く。
完全に。
理性が崩壊した音が、聞こえた。





「あま、ね……ッッ、ぃっ、た」




ガチャン、て。
時雨の左手首に回された、手錠。
そのまま彼は、時雨を押し倒し自分の右手で、時雨の"右手"を、捕えた。
もともとこんなもんで雨音くんを拘束出来るとは思ってない。
簡単に外されちゃうだろうことも、想定済み。
だけど敢えて彼を拘束したのは。
彼に言い訳を、与えるため。
『動けなかった』言い訳を。




「雨音……ッッ、手、親指……っ」
「平気」


ぐい、と左手親指を口に咥えて。
引っ張れば。
鈍い音と共に雨音くんの顔が、歪む。


「………ッッ」


間接は外れた時より戻す方が、痛みを伴うもの。
手錠から逃れる方法は間接を外さなくても彼なら出来たはずだけど。
冷静さをなくしてたのが、良くわかる。





ふたりの様子に僅かに口角を上げ、タバコに火を着けた。





「ちょ………っと待ってッッ雨音……っ」
「もう待たない。ずっとずっと、我慢してた。でも我慢する必要、なかったんだよな。」

「………ぇ」

「時雨には"これ"が、一番効くんでしょ」





雨音くんに捕まえられた両手が、ガチャガチャ音を立てる。
彼の右手と繋がれた時雨の左手。
右手で時雨の右手を押さえ込めば、完全に時雨の手の動きを制することができる。
いくら雨音くんでも、訓練を受けた時雨の両手を片手で押さえ付けるのは困難。
両手とも動きを制するには、確かに手っ取り早い方法かもしれない。
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