第5章 番外編
教授の家で俺も面倒見てもらってるのは、素直にありがたいとも思う。
リビングの隣にある教授の寝室に時雨も毎晩寝ているわけで。
毎晩毎晩甘い声やら音やら。
ひっきりなしなのはどうかとも、思う。
幸い俺が貸してもらってる部屋はリビングからさらに奥の廊下の突き当たり。
部屋にいれば余計な音は聞こえない。
だけどやっぱり、昔からの知り合いが毎晩毎晩鳴かされてるのを聞くのはどうも耐え難いもんがある。
しかもこんな状態で寝かされてるってゆーのに、時雨のやつ全然動揺もしてない。
どんなことしてんだよ、こいつら。
目の前に突き付けられたリアルな現実に、知らずに奥歯を噛み締めた。
「………」
しー、と。
にこりと笑いながら人差し指を立てて。
動けないよう支柱に両手を固定する教授。
「………」
なんのパフォーマンス、これ。
こんな手錠(おもちゃ)、時雨だって簡単に外せるし。
時雨の両手に嵌められてる外せなさそうなベルトじゃなくて、わざわざこんなもんで動きを制限するってことは、もともと拘束するつもりなんてないんだろう、こいつには。
だけど。
「………っ、やッッ、だ!!教授、お腹、壊れ……ッッ」
「………っ」
目隠しされてるとはいえ、教授に後ろから突き上げられて。
こっちからは時雨の表情が良く見える。
涙でぐちゃぐちゃになった黒いアイマスク。
半開きの口から覗く、真っ赤な舌。
飲みきれない唾液。
『きのう、時雨とふたりで飲みに行ったそうですね』
これは。
俺に対しての牽制も、兼ねてるんだとわかった。
わかったところで。
泣いてる時雨を助けようと体は動かない。
止めさせなきゃ。
わかってる、のに。
金縛りにあったように体が動かない。
「もぉ………ッッ、とま、止まってぇ、きょーじゅッッ、やだぁ」
時雨の乱れた姿を見る度に、生唾が喉を通っていく。
目が、離せない。
「……っ、き。きょーじゅがッッ、すき」
『協力して欲しいことがあります』