第5章 番外編
『帰ってそうそう呼び出しなんですけど、昨日何があったんです?』
出張から帰ったばかりの教授が、朝食をとってる俺の横で腕時計を外しながら、ため息。
時雨はまだまだ、夢の中だ。
昨日相当飲んでたし、当分起きる気配はない。
『時雨が昨日暴れて、警察沙汰してたよ』
そう、教授が昨日のうちに用意してくれた朝食のパンにかじりつきながら。
何気なく呟く。
何気なく呟いたこの言葉が地雷になるなんて、思いもせずに。
『………雨音くん』
社長からの呼び出しから疲弊して帰ってきたのがお昼前。
顔の暗さからしてそーとー搾られたな、と察しながらも無言で視線を向けた。
ダイニングに座ってコーヒーを飲む俺の目の前に音もなく座って。
ため息、ひとつ。
「………」
「時雨は?」
「シャワー」
「そうですか」
「………」
こいつのこの絶妙な間の取り方、背筋が震える。
俺がどうすればビビるのか、良くわかってやがる。
「雨音くん」
「な、なんだよ」
別にビビったわけじゃなくて、コーヒーが熱かったせいだ。
一気に口に入ってきたことにビビっただけだからな!!
「………昨日時雨とお酒飲みに行きました?」
「へっ!?」
予想に反した意外な質問に、思わず変な声がでる。
「行きましたよね」
「行った……けど」
「ふたりで?」
「………あんたいなかったじゃん」
「ふたりで?」
「………ふたり、で」
「そうですか」
そのままふらぁっとダイニングを立つ教授の背中を見送って、いれば。
急にくるっとこちらを振り向いた。
「……な、んだよ」
「雨音くんに、お願いがあるのですが」
「は?」
『協力して欲しいことがあります』
━━━━━━━――ー……
━━━━━━……
「や……ッッ、ぁあ」
そのまま連れて来られたのは、薄暗い地下の一室で。
硬そうなベッドには後ろ手にベルトで拘束されて、目も覆われたままの時雨が寝かされていた。
平然と横になってる様子から察するに、たぶん日常的にこんなことをしてんだろう、こいつら。