第3章 殺し屋業、復帰!!
決して達することのないように。
果てられないように。
コントロールした弱い刺激しか、時雨には与えていない。
「〰️〰️〰️ッッぅう、っぁ」
体が震え出す、直前で手を止める。
耳を舌で犯し、胸への刺激を止めて下半身へと手を伸ばす。
何度かそれを繰り返せば。
時雨は自分から唇を、重ねて来た。
振り向き様の口付けが苦しいのか、もっと深く欲しいのか。
気づけば向かい合い、首へと両手を絡めながら必死に深く舌を絡める時雨の姿。
「時雨」
欲しがる時雨の唇を右手のひらで静止し、キスを止める。
「久々の殺しは、興奮した?」
「ぇ」
「肌を切り裂いた感覚は?」
「………教、授?」
女子トイレで時雨を見つけた時の、時雨の表情が目に蘇る。
イキイキとした、眼差しが。
「時雨、答えて」
「あ………、良く、わかんない。でも、感触は、残ってる」
「嫌な感じ?」
「………どう、かな」
「………」
昼間襲われた時の、時雨の行動。
針金ひとつでも人は簡単に殺せる。
殺し方さえ、わかっていれば。
あの時の表情。
瞳。
あれは。
まるで楽しんでいるようにも、見えた。
「そっか」
『嫌な感じ』は、しないか。
「教授?」
「時雨」
「なに?」
「今日は疲れたでしょう?ゆっくりお湯に浸かっておやすみなさい」
「ぇ」
首に回された時雨の両手を引き剥がして。
背を向ける。
「教授」
けど。
ぐん、と。
半分濡れたスーツを引かれ、次いで上から温いシャワーが降ってきた。
「………っ、時雨シャワーとめなさい」
「いや」
「時雨」
「教授もびしょ濡れだよ?お風呂一緒に入るんでしょ?」
ぐい、とネクタイが引かれ、唇が重なった。
「……もとから休ませる気などありませんでしたよ」
「知ってる」
「時雨の方が、限界でしょう。どうして欲しい?」
ネクタイを解いて、スーツを脱ぎ捨てる。
せっかく逃してあげようと思ったのに。
『血』を鎮めるのはこれがやっぱり一番なわけだ。
殺人、なんて非日常。
それが日常なら。
狂わないわけなどないんだ。