第2章 絶賛失業中、です。
あの笑顔の下に張り付いたなんとも言えない威圧感。
絶対眼鏡は凶暴な瞳を隠すための道具だ、絶対。
「大丈夫だって。行こう?ね」
「駄目だよ。怒られるもん。教授に聞いてから。すぐ来るって言ってたし」
「大丈夫大丈夫」
軽い口振りでひとりの男が肩へと手をまわし、もうひとりの男が右手を引く。
「ちょっと、離してってば。ここ離れたら怒られる」
「怒られるまえに帰って来るよ」
〰️ッッ、しつこい!!
それに肩、気持ち悪いし。
肩へと手をまわす男の腕を取って、その場で背中から思い切り地面へと投げ落とした。
「しつこい!!ここで教授待つんだって言ってるでしょ?」
「は?」
地面に叩きつけられた男が、首を押さえて立ち上がり。
もうひとりの男があたしと立ち上がったばかりの男を交互に見た。
「ってぇ、何してんだよ!!」
「きゃ」
そのまま勢い良くお腹を蹴られて、反動でガードレールへと、体は打ち付けられた。
「━━━━ッッ!?」
拍子に。
なかに入っていた"もの"が、ぐり、って。
奥へと入りこんだ。
「………っぁ、ぅあ、や…っ」
ガクン、て。
お腹を押さえて膝をついたあたしのまわりを、ふたりの影が、取り囲む。
「………ッッ」
何。
なんでいま、動いて……っ
お腹。
苦し………ッッ
奥。
「………っぁぁ」
「まじ手間かけさせんなよ」
うるさいうるさいうるさい。
どっか行ってよ。
もうほんと、最悪。
クレープ、地面にぐっちゃぐちゃだし。
お腹、苦しい、し。
「………」
キラリと、ブーツに光る金具。
そうだ。
針金。
目立たないからこれだけ見逃されたたんだ。
右手に針金を握りしめて、めんどくさい男の喉元目掛けて、勢いよく手を伸ばした。
「時雨」
びくん、て。
名前を呼ばれた途端に、喉元へあと数ミリ、のところで体が静止する。
「そこまでですよ」
ピタリ、と。
止まった針金の先が勢い余って喉へと少しだけ、突き刺さり。
男はその場で腰を抜かすように、しりもちついた。