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暗殺者の正しい飼い方しつけ方

第2章 絶賛失業中、です。


それから。
教授は何かと心配性。

『ひとりで外出るの禁止』
携帯も、壊された。
『食べる時はいただきます。終わったらごちそうさま』
『おはよう、おやすみ』
んーと、それから。
『いってらっしゃい、と、おかえりなさい、でキス』
これやんないとご飯くれない……。
最低限の日常生活だ、って、えらい大学の教授さまがそういうんだからきっとそうなんだろう。
狭い世間で育ったあたしには。
俗にいう一般常識が備わっていない。
胸にも"ブラ"ってゆー下着を着けないといけない、とか。
教授に言われてはじめて知った。
だけどこれ。
かなり窮屈であたしは嫌い。




「時雨」
「何、教授」
「出掛けます。これ着て下さい」


出掛けるときはフードをしっかりとかぶる。
これも教授が決めたルール。
死んだことになってるあたしが、街中をうろうろしてるわけにもいかない、って。
それにたぶん、送ったあたしのDNAはすでにレプリカだってことはバレてるだろうからって。
それから。
「時雨のこのキレイな金髪は目立ちます」
だとか。
別に目立たないよう色を染めてもいんだけど、それは教授がものすごい勢いで反対した。


「時雨」
「はい………、ん!?ん、んんッッ」

狭いエレベーターの中。
突然唇が奪われた。
チラリと階数を見れば。
全然動いてない。
さらに入り口のボタンへと視線を送れば。
どこも点滅すら、してない。
これじゃエレベーター、動かない。
必死に右手を伸ばして、ボタンへと手を伸ばす。

けど。

あと数ミリで指先が届きそうな、時。
それはいとも簡単に引き離された。
ぐい、と絡み取られた指先に自分の掌を重ねて。
教授はあたしを壁へと追い込んだ。
もちろんずっと、唇はくっついたまま。


「惜しいですねぇ、時雨」
「………」


絶対わざと、なくせに。
もうあとちょっと、な時にいつもこうやってこの人はあたしの邪魔をするんだ。


「時雨」


耳元で囁かれた、艶のある声に。
体がびくん、と反応する。
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