第1章 出会い
いのりはあの後部室から戻ると弁当を食べながら事情聴取が始まった。
「ねぇねぇ及川さんからどんな内容のお呼び出しだったの!」
食い気味で聞かれいのりはお弁当を詰まらせるところだった。
『いや…あの…ちょっと中学の頃の先輩でね。マネージャーにならないかって…』
さっきの出来事を遥に話した。
「え、すごい!さすがいのりだね。でするの。しないの?」
『しないよ。遥も知ってるでしょ。私はバイトと勉強で手一杯だからマネージャーなんてできないよ。」
精一杯の笑顔で答えたつもりだった。遥は勘が鋭いからごまかしがきかない。だからなんでも話せる関係になれた。友情って時間じゃないんだなって思えた。だから今回の件も笑顔で答えたつもりがどこか引っかかるらしい。
「ねぇなんか隠し事してるでしょ。ほんとはマネージャーしたいんじゃないの」
今回もまたいのりの嘘は遥によって簡単に見破られてしまう。
『したくても…できないよ…。みなさんに迷惑かけるだけだし…。』
食べている箸を下ろして遥に言う。今の自分はしたくてもできない。できる責任を持てない。そんな簡単に決心が付けないのだ。
「いのりの決めたことならどっちでもいいけどいのりの良くないところだよ。周りのことばっか考えて自分のことを我慢するのは。他の相手はそうじゃないかもしれないよ」
うん、ごめんね。ありがとう。と言いながらいのりは遥に言う。本当に自分はいい友達を持ったなと思った。
まったく手のかかる子なんだからーと言いながら面倒見のいい遥はいつでもいのりの味方である。