第8章 後遺症◎
『恵…くん…?』
『あいつ…俺が殺してやる…!!』
『行かないで…ここにいて…お願い……』
逃げるサイドポニーテールの男を追い掛けようとする恵君の手をギュッと握る。
『クソッ…』
『ありが…とう…』
『分かったから話すな!!
おい釘崎頼む!!!五条先生と硝子さんに…今すぐ連絡してくれ!!早くしてくれ!!!』
"こんな取り乱している恵君を見るのは初めてだなぁ…"
遠のく意識の中で、そんな事を考えていた。
『こんな格好で…お前…何されたんだよ……』
とても悲しそうな顔をして恵君が言う。
『…大丈夫…だよ…
恵君が助けに来てくれたから、何ともない…』
『何ともなくねえよ…』
そう言うと恵君は自身が着ていた上着を脱ぎ、私にかけてくれた。
『刀・・・痛いだろ…
でも、抜くと出血が怖いから…もう少しこのままでもいいか…?』
言葉に詰まりながら恵君が言う。
『だい…じょぶ……』
『吉本…本当にごめん…』
この声は虎杖君・・・?
『今2人に連絡したから!すぐ来るって!!
泉智しっかりしなさいよ!』
あ、釘崎さんも・・・
『みんな来てくれたんだ…』
嬉しさと安堵で涙が止まらなかった。
"ほら、私には助けに来てくれる仲間がいるでしょ?"
私はそのまま薄れていく意識を手放した。
『多分逃げた奴は以前泉智を襲った…高専に来てた男だと思う…
そいつは取り逃した…』
『そうか…
俺、もう一回この辺見て来る。
伏黒と釘崎に吉本のこと任せていいか?』
『…ああ』
『大丈夫よ』
『もし見付けたら、俺がこの手でぶっ殺してやる』
俺らが駆け付けた時には、吉本はすでに襲われてた。
顔には殴られたような跡があり、肩に刀が貫通していた。
衣類ははだけていた。
"もしかしたら・・・"
そんな事が頭をよぎってしまう。
"俺がトイレに行かなければこんな事になってなかった…"
そんな事を考えると悔やんでも悔やみきれねえ。
何としてでもそいつらを捕まえて殺してしまいたい・・・
『もうあいつら逃げやがったのか…
逃げ足の速い奴らめ』
『誰が逃げたって?』
背後から声がしたので振り返ると、そこには人間とは思えぬ目をした男が立っていた。
『お前があいつを……』