第7章 傾覆
『面白い奴も現れたことだし、そろそろ駒を動かしていかなきゃね。』
『ふ〜ん。で、どうすんの?』
『あの男に彼女を襲わせるんだよ。呪術で痛み付けるんだ。
仲間は誰も助けに来ない。なぜならみんなお前なんてどうでもいいからだ、なんて言ってもらってね。
なんなら、自分も元々は高専の教師だったこと、仲間に裏切られたことを言ってもらってもいい』
『おもしろい奴ってなんで分かるのさ?』
『彼女は呪符使いなんだよ。
あの男は、彼を封印した元妻が呪符使いだったと言っていただろう?
私の考えだが、多分彼女と元妻には何か関係がある』
『でも夏油は駒に身元明かしてないんでしょ?なんで駒が呪符使いだって分かったの?』
『真人、私がただ闇雲に猿を抱くと思うかい?
疲れて寝てしまった後、隅々まで調べさせてもらったよ』
『ホント君って怖いね〜』
『さて、そろそろ私は駒に会ってくるとするよ』
高専の入口付近で彼女を待ち伏せする。
関係者にバレないよう、慎重に…
すると彼女が中から出て来たが、どうやら他の女も一緒のようだ。
後ろから彼女たちに着いて行くと、辿り着いたのは渋谷の美容院…
私は近くのカフェでコーヒーを飲みながら、動きを念入りに確認する。
"一人で出てきた…これはチャンスだ"
声を掛けようとすると、違う男に先を越された。
"あいつは誰だ?泉智の知り合いか…?"
あんなチャラついている猿と泉智が知り合いだとは思えなかったが、高専関係者の可能性も否定できず、私は彼女達の後ろをついて歩く。
しばらく歩くと風俗街に辿り着き、男は泉智を路地裏へと連れ込んだ。
私は人を待つフリをして2人の会話を聞く。
『え?やっやめ…』
明らかに嫌がる泉智の声・・・
"何をしている?"
路地裏を覗き込むと、男が泉智の首を愛撫しながらスカートの中へと手を滑り込ませていた。
『やっやめて…気持ち悪い……』
『は?俺が気持ち悪い?
お前、まだ状況分かってねえの?
お前可愛いし、肌もスベスベでまじ最高級だな
そんな奴食える俺ってツイてるよな!』
男は高笑いしながら言っている。
『呪操符…』
"コラコラ泉智、生身の人間に呪術は使わない方がいい"
『こんな所で何をやってるの?
これって同意?』