第2章 網にかかった蝶①【煉獄杏寿郎】
「お世話になりました。私はこれで失礼しようと思います」
「そうか」
頭を下げ、歩き出す。
早く、早くと心が焦る。
その時。
「よもや、気づくとは。隊士としては優秀なんだがなぁ……」
後ろで煉獄の声がしたと思うと、腕を思い切り引かれた。
「なっ……」
強引に振り向かされると、目の前には煉獄の顔。
え、と思ったときには唇が重ねられていた。
「んんっ!?」
口の中に何かが流し込まれる。
先程のピリッとした感触から湯飲みの液体を流し込まれたらしい。
「んんーっ!んー!」
吐き出したいのに頭を押さえつけられているので吐き出せない。
どんなに暴れてもそれ以上の力で押さえ込まれる。
「んんんっ!んぐっ、ん…!」
飲み込むしか選択肢がなく、は噎せそうになりながら喉を鳴らして飲んだ。
すべて飲み込むとやっと腕が緩む。
煉獄の胸の辺りを突き飛ばして距離を取った。
「なにを、なさるんですか!」
「ん?君が湯飲みの茶を飲まなかったからな。飲ませたまでだ」
「飲ませたって…!」
目の前で笑う煉獄から早く離れたい。
会話を切り上げて帰ろうと足を踏み出したとき、の視界がぶれた。
「ぁっ、え……!」
手足が痺れてその場に倒れこむ。
煉獄はその様子を口角をあげて見ていた。
そんな煉獄を見上げ、何とか立ち上がろうとするが力が入らない。
「な、なに…これ…!」
「即効性のしびれ薬だ。元々鬼への尋問用だからな、口は動かせるし意識はあるだろう?」
楽しそうに言う煉獄に絶句する。
「何で、こんなのっ…!」
「勿論君を手に入れるためだ」
動けないの体を抱えると、煉獄は自室の奥に進む。
そこには布団が敷いてあった。
それが何を意味するか悟ったは顔を青ざめさせる。
「や、やだ…離して…いや…」
「ふ、嫌なら抵抗してみたらどうだ?」
それが出来ないように薬を盛ったんだがな、と笑いを布団に転がす。