第2章 網にかかった蝶①【煉獄杏寿郎】
冨岡に言われたとおり、が煉獄と二人きりになることはなかった。
煉獄はたまに水柱邸に顔を見せたが、今から任務に行くのだと言って中にはあげなかったし、町に誘われてもやんわり断っていた。
「(……師範の言葉…炎柱様は私に何かするってこと?でもそんな様子もないし……)」
何事もなく日が過ぎ、冨岡からは明日の夕方には帰れそうだと鴉を通じて連絡がきた。
久しぶりだし師範の好きな鮭大根を作ろうと買い物に向かう。
丁度今日明日と任務はない。
町に向かって歩いていたその時、背後から手が伸びてきて裏道に引きずり込まれた。
「っん……!?」
口を塞がれていたので声が出せない。
暴れていれば、首に鈍い衝撃が走り……はそのまま意識を失った。
「っ……!」
目が覚めると見慣れない天井。
はガバッと身を起こした。
町に行こうとしていて、そこで………
「目が覚めたか?」
「え……!」
横を向くと煉獄が立っていた。
「え、炎柱様…どうして…」
「君が倒れていたからな!ここ炎柱邸に運んだ!」
「倒れていた…?」
「あぁ。貧血でも起こしたのか」
「貧血……」
意識を失う前に感じた首への衝撃。
あれは…意図的に攻撃されたものではないか?
難しい顔をしているに苦笑し、煉獄は持ってきた湯飲みを置いた。
「起き上がれるなら茶を飲んで落ち着くといい」
「あ…ありがとう、ございます…」
"煉獄と2人きりになってはいけない"
冨岡の言葉を思いだし、はすぐにここを出ようと湯飲みに口をつけた。
「んっ…!?」
液体に触れた瞬間、舌がピリッとした感触に襲われる。
咄嗟に湯呑みから口を離した。
「(これは……何か混ざってる!?)」
本能が危険だと叫んだ。
途端に目の前の男が怖くなった。
「どうした?」
「あ、い…いえ」
湯呑みを置いたは素早く立ち上がった。