第13章 9. 夜半の求愛 ※
「うわっ……!今日の賄い、めっちゃめちゃ豪華ですね……!」
寮生達が感嘆の声を上げた。
その声につられて他の出勤メンバーの寮生もぞろぞろと厨房に集まってくる。
午後8時を迎え、今日もモストロ・ラウンジの1日の営業が終わった。
それに合わせてフロイドはいつも通り賄いを用意していた。
「これ、出来たから持ってっていーよ」
フロイドは作った賄いを大皿に移し、近くにいた寮生――ルカに声をかける。
「ありがとうございます。今日はエビ三昧のメニューなんですね」
ルカは皿を受け取ると、フロイドに声をかける。
皿に用意されたのは、シーフードたっぷりのチャーハンとエビチリ、小エビのサラダ。
これでもかとエビをふんだんに使ったメニューに、ルカはふんわりとした笑顔を浮かべている。
「あー、言われてみればそーだね」
ルカに声をかけられたフロイドは上の空気味に返事をする。
エビをたくさん使ったメニューは無意識だったらしい。
「フロイドさんも食べますよね?」
「あァ……、オレは今日はいーや。みんなで食べてぇ」
「わかりました。フライパンとかは僕達が洗っておくので、そのままにしておいてください」
「うん。ありがとぉ。じゃ、お疲れー」
「はい!お疲れ様です」
厨房を後にするフロイドの背中をルカとその場にいた寮生で見送った。
フロイドの姿が見えなくなると、ルカと寮生達は顔を見合わせる。
「……フロイドさん、なんだかいつもと雰囲気違いませんか?」
ルカの発言に寮生達は揃って頷いた。
「確かに。けど機嫌が悪いってわけではなさそうだな」
「シェラちゃんがお休みだからテンション上がらないんですかね?」
「どうだろうな。けど、やる気がないって感じでもなさそうだったし」
エビづくしの豪勢な賄いの前で彼らは首を傾げる。
そして、よくわからないけど機嫌が悪くないからいいや、という結論に至り、いそいそと賄いをホールへ持っていった。
フロイドはモストロ・ラウンジのホールを出ると、シャワールームへ向かった。
サニタリールームで剥ぎ取るように服を脱ぎ、ピアスを外す。
モストロ・ラウンジのシフトに入っていない他の寮生が使った後なのか、シャワールームはもわんとした空気とソープの匂いに包まれていた。
ひたひたと生暖かいタイルを踏み、フロイドはシャワーのコックをひねった。