第10章 7-2. 咬魚の誘惑 中編
「ラウンジで用意しているシーフードは全て高タンパクかつ低カロリーな食材です。ベジタリアンのお客様向けに豆腐の用意もあるので、ダイエット目的でないのなら、それらを使った料理をたくさん食べるのが良いのでは。あなたの体型で食事量を減らしたら痩せていく一方でしょう」
日頃からカロリー計算をしているのは伊達ではない。
高タンパクかつ低カロリーという条件をクリアしている食材を、アズールは悩みもせずにスラスラと教えてくれた。
確かに豆腐はヘルシーな上に腹持ちがいいと、ヴィルが言っていた気がする。
「豆腐かあ、麻婆豆腐とかは?」
「すみません、香辛料はNGです……」
フロイドの提案に、シェラはNGを出す。
だがシェラも豆腐料理と言われると、冷奴としてそのまま食べるか麻婆豆腐にするかくらいしか浮かばない。
「うーん。じゃあ小エビちゃんが次の出勤の時までに豆腐メニュー考えとくねぇ!これでいっぱいご飯食べれるね!」
「ありがとうございます」
シェラに作った賄いを食べてもらえることが嬉しいのか、フロイドは満面の笑みで言った。
「僕も一緒に考えましょう。ヘルシーで満足感のある料理は興味深い」
アズールも乗り気だ。
モストロ・ラウンジの正式なメニューの考案ではないのに珍しい。
「ありがとうございます。豆腐料理はダイエットにもちょうどいいですもんね」
何気なくシェラが言うと、間髪入れずに鋭い視線がシェラへ飛んできた。
「シェラさん、ひとこと余計ですよ」
「あ、すみません……」
「まったく、こういう所はオクタヴィネルに染まらなくてもよろしいのですが……」
アズールは肩を竦めると、再び大きな溜息をついてフロイドとシェラを見やった。
その後1ヶ月ほど、シェラが出勤する日の賄いは豆腐料理になっていて、寮生達は不思議に思ったらしい。
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